―いねむり どくしょ―

毎日読んだ本の紹介と感想。気に入った本には★、とても気に入った本には★★をつけています。コメント・トラバはお気軽にどうぞ。
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近況報告
JUGEMテーマ:読書

気がつけばあっという間に1年経ってしまったことに驚いています。
気づかない間にコメントもいただいていました。返信をするタイミングをすっかり失ってしまいました。本当にすみません。

この1年で変わったことは何もないのですが、
2年ほど前から小説書きを再開しました。
元々このサイトは高校生だった頃に、自作の小説だの読書感想文だのを置くためにはじめたものです。
その後浪人をきっかけにサイトの更新を停止し、大学生になってからは読書感想文だけを時流に乗ってブログに移し(ちょうどブログが世に広まり始めた頃でした)、今に至る感じです。
社会人になって落ち着いてきて、また元の感じで小説を書こうかなあと。まあそんな感じです。
2年かけて、賞に応募して落選した作品とか、どこにも出していない掌編とか、いくつかたまってきたので
そのうちまた小説サイトに戻そうかと思っています。
まあ、こうしてブログを1年も放ったらかすような人間ですので、実現するかはわかりませんが。

絵空事はともかく。
このブログじたいは、どんなに更新が止まったとしても、それこそ生きている間はずっと続けるつもりです。
更新頻度は相変わらず低いと思いますが、思い出した時にでも覗いていただけると嬉しいです。

以上、近況報告でした。
★真昼なのに昏い部屋 (江國香織)
JUGEMテーマ:読書
 第5回中央公論文芸賞受賞作。不倫を扱った小説です。

美弥子さんは、都内の高級住宅街にある大きな家に暮らす、専業主婦。
「自分がきちんとしていると思えることが好き」で、毎日の日課――掃除や、夫の浩さんが脱ぎ散らかした衣服の片付けや、鉢植えに水をやること――に安心感と喜びを見出す女性です。
彼女は来客がある時でもお喋りしながら編み物や刺繍に精を出します。「何か」していることが好きなのです。

そんな美弥子さんは、近くに住むアメリカ人のジョーンズさんと出会い、ある日一緒にフィールドワーク(散歩)に出かけます。
その日から、ふたりはお互いを意識し合うようになり、やがて「きちんとした」美弥子さんの世界は少しずつ変わりはじめます。



最後の1ページに全てが込められていました。

本書はですます調だし、「美弥子さん」「ジョーンズさん」のように登場人物をさん付けで描いているし、物語の進行もはじめはごくゆっくりとしているので、
童話の世界のような、きらきらとしてどこか現実感のない時間が流れるのですが、
合間に挟まれる夫の浩さんとの会話や、美弥子さんの心理描写で、少しずつ現実に引き戻され、しまいに一気に激流に突き落とされました。
にくい演出です。

以下、好きな部分をいくつか列挙します。
私、世界の外へでちゃったんだわ。 (p.169)
「その、つまり僕は、ずっと以前から世界の外にでていますから」 (p.175)
「僕たちは似たもの同士ですね」
と、ジョーンズさんは言いました。
「事実に安心できる人間もいれば、事実に打ちのめされてしまう人間もいますから」 (p.184)
あっというまに転落してしまった。美弥子さんは思いました。
転落?
(中略)私は転落したのかしら。でも、どこから? (p.213)
どの文章もとても平易で、ふわふわとしているのに、本質を真正面からきちんと捉えています。
こんな文章が、きらきらした不倫世界の合間に挟まれているのです。その度にどきりとするわけです。
最近の江國香織さんの作品の中では、かなり好きかもしれません。


美弥子さんと浩さんの全くかみ合わないやり取りも、本書の魅力のひとつです。
ふたりが結婚に至ったまでの説明や、浩さんの心理描写はごく少ないのですが、
短い中に全てが込められていて、滑稽なまでに悲しい描写です。
浩さんと結婚して、美弥子さんは幸せだったのでしょうか。ジョーンズさんと出会うまで、彼女はすれ違うことが当たり前なのだと思っていました。
ですが世界の外に出てしまった今、美弥子さんは浩さんとの関係性にはじめて向き合うこととなります。
気づかない幸せと、気づく幸せ。果たしてどちらが幸せなのでしょうか。


籠の小鳥が可愛らしいのは籠の中にいるからです。
外に飛び出してしまった小鳥は、たちまちただの野鳥になってしまうのです。
読み終えてふと、そんなことを、思いました。
ビアンカ・オーバースタディ (筒井康隆)
JUGEMテーマ:読書
 ”あの”筒井康隆が、ラノベに参戦。しかもイラストは”あの”いとうのいぢ。

ビアンカ北町は高校の男子生徒誰もが憧れる超絶美少女。生物研究部の一員である彼女は、放課後になると毎日怪しい研究を繰り返す。
彼女の実験に、文芸部の頼りない後輩男子やクラスメイトのヤンキー系美女、ビアンカのうぶで可愛い妹、さらには”未来人”までが巻き込まれて――。



帯の言葉通り、「2010年代の『時をかける少女』」でした。
2010年代ある意味最強の2人がタッグを組んで送るライトノベル、直球勝負の作品です。
わかりやすくキャラの立った登場人物、簡潔で無駄のないストーリー展開、適度に口語で読みやすい文体。
ライトノベルの書き方で『時かけ』を書き直すとこうなりました! という感じでしょうか。
それも作者自身が書いたオマージュ作品なわけで、作者のファンならずとも楽しめると思います(なので、『時かけ』を読んでからこちらの小説を読んだ方がニヤニヤできます)。
往年の作者ファンの中には、もしかしたらこの小説ではじめてラノベに触れる方もいるのかしら。お色気たっぷりの内容・イラストなので、気絶しないといいのですが……。

『時かけ』の、淡くて甘酸っぱくて爽やかな読後感もいいですが、こちらのちょっと刺激的でドタバタな「新・時かけ」もまた、全く違う色合いの作品に仕上がっていて今風で私は好きです。

それにしても筒井康隆氏、この歳で新たなジャンル開拓、それもきっちりラノベの王道を押さえてくるとは、さすがです。
続きが出れば読みたいけれど、でも「新・時かけ」としてこれで完結した方が綺麗にまとまる気もするし、悩ましいところです。


カラーイラストも豊富だし、すぐに読み終えられる長さだし、日曜の午後に日なたに寝そべって読むにはぴったりかも。
逆に満員電車で読むのはオススメできません。イラストはともかく、内容が一部、たいそう刺激的なので……(章題に全て「スペルマ」の文字が含まれている、と書けば何となくわかるかしら)。
読み始めた頃は目玉が飛び出るかと思いました。もしかして官能小説だったのかと疑ったくらいです。

かつての『時かけ』ファンと、新時代の『時かけ』ファンへ。
気楽に読めて、でも実は色々と凝りに凝りまくっている作品です。編集者、気合い充分です。
★桐島、部活やめるってよ (朝井リョウ)
JUGEMテーマ:読書
 第二十二回小説すばる新人賞受賞作。
作者はその後『何者』で直木賞を受賞しています。

県立高校バレー部のキャプテン・桐島が、ある日突然部活を辞めたという。理由は誰も知らない。
その日を境に、バレー部のメンバーや桐島と仲の良かった子たち、さらに同じ学年の桐島とは無関係だった面々にまで、小さなさざ波が起こって――。



映画版は観ていないので、純粋に小説の感想を。

物語のキーパーソンは桐島のはずなのに、本文中に彼は全く登場しない。なかなかニクイ構成です。
一つの高校を舞台にした長編小説ではありますが、桐島を取り巻く五人の高校生それぞれを章立てて追った、連作短編集でもあります。

どの章が、誰の話が、というより、全部の話が、痛い。
自分も高校生の頃、似たようなことを考えていたし、クラスに同じようなタイプの子がいたっけ――と、リアルにまざまざと思い出して、自分の経験と登場人物の心情を重ねて、苦しみながら読みました。

中学・高校の頃って、外見とか、運動神経の良さとか、何部に入っているかとかがとても重要で、
それによってクラスの中での立ち位置やグループも決まっていたように思います。

 自分は誰より「上」で、誰より「下」で、っていうのは、クラスに入った瞬間になぜだかわかる。僕は映画部に入ったとき、武文と「同じ」だと感じた。そして僕らはまとめて「下」なのだと、誰に言われるでもなく察した。 (p.91)

この部分なんかはまさに、全面的にその通りです。
大人になって学校生活を抜け出した今となっては、あの感覚は一体何だったんだろうと不思議だし、そんなことで決められたランクなんか本当は重要じゃなかったんだって思うけれど、
中高生だったあの頃は、自分がどの層に属しているかはとても大切なことでした。

私自身は下の方のランクにいた部類だったので、映画部の涼也の話がいちばん自分のことのように感じられました。
この文庫版には、涼也と関係のある、東原かすみの話も収録されているのですが、それがまたいい味を出しています。
中学時代の話ですが、他人の言動にすぐに影響されたり、ささいなことで友だちを仲間外れにしたり、「あるある!」と頷きたくなる話です。
涼也との話も、いい感じにまとめられています。


ランク付けという部分でひとつ難点を挙げれば、小説はあっさりした「上」と「下」だけのランク付けでしたが、本当はもっと複雑だと思います。
映画部とかブラバンあたりは「下」というより「中」ぐらいなんじゃないでしょうか。
本当はその下の立場もあったよなあ、と思うのは自分だけでしょうか。
何にせよ、大人になってしまえば意味のない分類ではありますが。



痛い感覚を痛いまま描いている、等身大の小説でした。
よくも悪くも話し言葉そのままで書かれていて、最初は違和感を感じましたが、心情描写としてはむしろこの書き方の方が合っているかもしれません。
作者が今後社会に出て、大人を主人公にした小説を書くことがあったら、どんな風に等身大に描くのか(あるいは全く違う視点で描くのか)、とても楽しみです。
同世代にオススメしたくなる一冊。
時をかける少女 (筒井康孝)
JUGEMテーマ:読書
 
言わずと知れた古典的名作。何度も映画化され、アニメや漫画にもなっています。
本書はそんな「時かけ」の他、2本の短編も収録された新装版です。

※以下、この作品に限らず、タイムトラベルに関する多くの小説・ゲームのジャンル・トリックに関するネタバレを含みます。注意。


「時をかける少女」

元は1965年〜1966年にかけて、中高生向けの雑誌に連載されていたということで、
いやはや50年程昔の作品です。50年!
文体や単語は少々古めかしいけれど、平易でわかりやすく、科学的理屈の説明もあっさりしています。
ジャンルとしては、タイム・リープとテレポーテーションのミックスですが、
淡い恋愛模様も描かれていて、SFの中でもかなり読みやすい作品ではないでしょうか。

名作と呼ばれる通り、SFのお手本、教科書のような作品でした。
高畑京一郎『タイム・リープ』や、谷川流『涼宮ハルヒ』シリーズなど、多くの作品に影響を与えた短編です。


悪夢の真相

ミステリ仕立ての、ちょっと怖い短編。
人が何かを怖がるのは必ず原因があるからだ、という前提のもとに、主人公の昌子は弟が夜中にトイレに行くのを怖がる理由や、自身が般若の面を怖がるわけを次々に解き明かしていきます。
やがて最大の謎、遠い昔の、おぼえていない事件に挑むことになるのですが――。

SFというよりはミステリです。
昌子が解決していくのは身の回りで起きる日常的な内容ですが、文一とのコンビがシャーロックホームズのようにうまく回っていて、安心して楽しめます。
現実もこんな風にうまくいくといいのですが、いやはや。


果てしなき多元宇宙

それはいつもの帰り道。暢子は一重まぶたに悩んだり、アイドルになりたいと思ってみたりする普通の高校生。気になる男の子もいて、今日はその彼と一緒に帰るところだが、他校の不良高校生にからまれて――。

題名通りの並行宇宙ものです。
といってもごく短い作品ですので、科学的解説は味付け程度。
入間人間の一連の小説(『19』の短編や『時間のおとしもの』、『昨日は彼女も〜』『明日は彼女も〜』)や、ゲームではCROSS✝CHANNEL、やなぎなぎの「凍る夢」などなど
挙げればきりがないこのジャンルの中でも、かなりあっさりとしていて、でもうまくまとまった作品だと思います。
論じれば長い長い原稿が書けてしまいそうなので、感想はこのくらいで。


3作品ともすぐに読み終えられて、しかも粒ぞろい。いい短編集に出会えました。
未読の方も久しぶりに再読したい方も、ぜひ。
クジラの彼 (有川浩)
有川 浩
角川書店(角川グループパブリッシング)
(2010-06-23)

JUGEMテーマ:読書
 「自衛隊ラブコメ」シリーズ第一弾となる短編集。
「自衛隊三部作」(『塩の街』・『空の中』・『海の底』)のうち、『空の中』と『海の底』のその後の短編も収録されています。
 
クジラの彼

潜水艦乗りの彼氏と、普通のOLをしている彼女の物語。『海の底』の番外編です。
『海の底』ではクールで計算ずくに見えた冬原が、彼女の前で見せる甘えた顔に、彼女の言動に動揺し翻弄される姿に、ニヤニヤが止まりませんでした。
あのちゃっかり者の冬原はどんな女の子を好きになるのだろうと思ったら、なるほど、言葉の感覚が決め手だったわけですね。
クジラは世界中の海を旅して、どこに潜っているかわからないけれど、
潜水艦をクジラと呼ぶ感覚も、クジラ乗りが陸に帰ってくる日を待つ恋愛も
どちらもとても素敵です。

ロールアウト

自衛隊の次世代輸送機開発をめぐる、トイレについての物語。
思いがけない設定ですが、なるほど飛行機乗りにとってトイレの快適さは重要なポイントではあるものの、設計時には軽視されがちな部分で、(この小説では)議論のネタになるわけです。
トイレに対する男女の感覚の差と、淡い恋愛模様とがうまいこと交差して、バランスの取れた小説です。

国防レンアイ

ちょっと気が強い女の子と、万年友達以上の微妙な関係を保っている同期の男の子。
自衛隊という特殊な環境が舞台ですが、内容はとてもありふれていて、生々しくて、共感しやすい短編でした。友達のコイバナを聞いているような、そんなノリの小説です。
最後の部分がぐっときます。特にいっとう最後の、伸下の台詞が。

有能な彼女

『海の底』の夏木と望の後日譚。結婚を切り出すまでの微妙な駆け引きがうまく描かれています。
真面目すぎるくらいにまっすぐな夏木の、温かで優しいまなざしと、
同じくらいまっすぐで強いけれど、ちゃんと女の子の望の想い。
ふたりの真剣なぶつかり合いは理想的すぎるくらいに完璧で、これ以上ない後日譚でした。

脱柵エレジー

駐屯地を夜中に抜け出して、恋人に会おうとする新隊員と、それを未然に防ごうとする先輩隊員。
けれど先輩隊員だって、かつては同じように悩み脱柵を試みたかもしれないわけで。
そんな二段構えの、青臭い短編です。
自分に酔い、相手に酔うだけの十代の恋愛と、青臭い記憶を乗り越えた先にある、少し大人の恋愛と。
たぶん誰もが同じような経験があるのではないかしら。少し痛いくらいの青春モノです。

ファイターパイロットの君

『空の中』の後日譚。おまけ小説という言葉が合いそうな、『空の中』の読者向けのごく短い物語です。
光稀と高巳は本当にいいカップルです。


全体を通して、少女漫画さながらの、女の子の夢がいっぱいつまったラブコメでした。
現実にはこんな台詞言ってくれる人はいないぞ! とつっこみつつも、
顔が緩みっ放し、悶絶しっ放しで、息も絶え絶えにあっという間に読み終えました。
読み終えて間違いなく幸せな気分になれる小説です。
2012年のまとめ
JUGEMテーマ:読書
 今年もこの記事を書く日がやって参りました。

【記事数】
総記事数:22本
紹介した冊数:27冊

ふっふっふ、記事数約3倍、冊数約2倍。
秋以降ほとんど更新できませんでしたが、前半はそこそこ書けた気がします。


【おススメ度】

特に良かった本には、タイトルに★をつけています。
良かったものには★1つ、最高に良かったものに関しては★2つ。

この1年間で、★をつけた冊数は、27冊中、
★1:4冊
★2:0冊
でした。
2年連続、★2は該当なし。
気づかないうちに自分の中の基準が厳しくなっていたのか、それともいい本に巡り会わなかったのか。
来年は心を動かされまくるような読書がしたいです。

★1:
『不道徳教育講座』 (三島由紀夫)
『1Q84 BOOK3』 (村上春樹)
『1Q84 BOOK2』 (村上春樹)
『死体泥棒』 (唐辺葉介)


【個人的ランキング】

1位:『1Q84』シリーズ
…必ずしも評価はよくないようですが、古典的題材をきれいに、きちんと調理しているという点で、さすがだと思います。

2位:『氷菓』シリーズ
…軽い息抜きぐらいの気持ちで読み始めたら、あっという間にはまりました。
日常ミステリーということで、学校でのドタバタやそれにまつわるミステリー、友情やほんのりとした恋愛模様もいいのですが、
文学好きならきっと唸るだろうという各種名作がこれでもかというほど毎回登場するところも大きなポイントです。

3位:ほっと文庫シリーズ
…まだ売っているのかしら? 入浴剤と短編小説がセットになったシリーズ、全6巻です。
長風呂でゆっくり読書をするのが日課の私にとって、まさに天国が向こうからやって来た! という感じのシリーズでした。
入浴剤と小説の中身がリンクしていたり、小説もなかなかきちんとした角川文庫のあの赤い表紙だったりと凝っていて良い出来です。


【最後に】

いつもより更新回数が増えたとはいえ、まだまだ感想書かずに積んでる本が山のように……。
でも、まあ気負わずに、来年もコツコツ気が向いた時に続けて行きたいと思います。
人類は衰退しました7 (田中ロミオ)
JUGEMテーマ:読書
 「妖精さんたちの、ちいさながっこう」、「人類流の、さえたやりかた」の2本収録(プラス、いつもの活動報告)。

「〜がっこう」では、クスノキの里に私設学校が開校します。先生は持ち回り、生徒は3人。ところがこの3人は揃いも揃って悪ガキで、おまけに親はモンスターペアレント。
主人公の「わたし」は何とかまともに授業が行われるよう、奮闘しますが――というお話。

「〜さえたやりかた」では、「〜がっこう」とは一転、「わたし」は記憶喪失の状態で何者かに追われ続けます。妖精さん達の力は弱く、「わたし」は自分が何をしていたのかさっぱり思い出せません。
迫り来る追手に対処し、「わたし」は記憶を取り戻すことができるのでしょうか?


このシリーズ、いつもはほわほわした空気を楽しみつつのんびり読めるのですが、今回はなかなかにヘビーでした。読むのにちょいと時間がかかりました。

「がっこう」は、学力低下、学級崩壊、モンスターペアレントと、一筋縄ではいかない題材を取り扱ってるいます。
主人公の「わたし」も結構正面から問題に取り組むのです。
そのため、中編ではありますが読み応え充分でした。
いつものシリーズに漂うお気楽な空気を味わえたのは、全てのマイナス語がPTA推奨語に置き換わる部分と、妖精さんのゴキブリを捕まえに行く件ぐらいでしょうか。
PTA推奨語への置き換え、たとえば「悪口を言う」→「ユニークなおしゃべり」とか、「ビンタする」→「ほっぺに虫がとまっていた」など。
PTAへの配慮のためにわざわざ言い換えているのに、逆におちょくっているように聞こえる魔法の言葉です。
小説の中のネタ、冗談で済めばいいのですが、現実になりそうな気がして少し怖いのは私だけでしょうか……。

いつものように妖精さんが大活躍なお話かと思いきや、今作はあくまでも人間が主役でした。
読んでいて重く感じたのはそのせいもあるかもしれません。
良くも悪くも(気分転換に読むシリーズだと思っていたので)ヘビーな中編でした。


「さえたやりかた」もヘビーでしたが、重さの種類が違います。
いきなりの記憶喪失、謎の追手、という緊迫した状況を打開していくハードな中編です。
オチが冴えていて、さらに最後の活動報告も、オチにさらにオチをつけるような内容で、全て読み終えてから再読すると、見えなかった部分が見えてくる仕掛けです。
こちらも妖精さんはあくまで脇役です。


シリーズもいつの間にやら7まで続き、2012年夏にはアニメ化もされましたが
続きを楽しみにしています。
次回はもっと、いつものような脱力お気楽系だといいなあ。のんびりと息抜きに読みたいものです。
伏 贋作・里見八犬伝 (桜庭一樹)
JUGEMテーマ:読書
 2012年10月20日公開映画「伏 鉄砲娘の捕物帳」、原作小説。
漁師の少女・浜路は兄の誘いで江戸に移り住む。当時、江戸には「伏」と呼ばれる者たちが跳梁跋扈していた。「伏」とは、姿かたちは人間なのだが、体に犬の血が流れる者たちだ。
浜路と兄は伏を狩る賞金稼ぎとして、夜な夜な江戸中を駈け回る。
人間と伏、狩るものと狩られるもの、光と影の因果の物語。


作者の最近の作風とはガラリと違う、ライトノベルのレーベルで出していた頃のような文体に驚きました。
軽くてわかりやすくて作品に合っているけれど、あっさりしていて深みがないし、ちょっと薄っぺらい文体です。
作品そのものもエンターテインメントに徹している感じで、なるほどこれならば映画として楽しめるだろうなと思わせる内容でした。
江戸が舞台ですが、どこまでも現代的というか、登場人物の口調も町並みの描写もとても現代的です。

贋作・里見八犬伝と銘打ってはいますが、内容は全く違うしどこまでもライトなので、恐らく原作の南総里見八犬伝ファンは驚くのではと思います。
登場人物の名前や設定の一部を借りて、全然違うテイストの作品に仕上げている感じです。
そういう意味では、原作が好きな方にはおススメしづらい小説です。
逆に割り切って読める方や原作を知らない方なら、エンターテインメントとして楽しめると思います。


捕物劇のドタバタも面白いのですが、それよりも登場人物同士の因と果をめぐるやり取りも読みごたえがありました。殊に、ちっちゃな漁師の浜路と信乃の淡い感情のすれ違いや、伏たちが安房の森に旅をするくだりはなかなか味があります。
それから個人的に好きなのは、滝沢冥土です。滝沢馬琴の息子として、父の書く「南総里見八犬伝」の贋作小説を夜な夜な書き綴り、また浜路らをこっそり尾行しては捕物劇を瓦版にして売りさばく。面白い設定です。
滝沢馬琴が原作小説を書き、それを下敷きに冥土が贋作を書き、さらに作者の桜庭一樹が物語世界の外側から大きな贋作小説としてまとめている。三重構造になっているというのがまた面白い設定です。
ですが、設定もテーマもいいのに、全体として長さはあるのに軽いまとめ方をしているので、せっかくの因と果という大きなテーマが薄くなってしまっていて、少し勿体ないと思いました。
もっとキャラクターを掘り下げてもよかったのではないでしょうか。
一冊で終わらせずにシリーズ化してもよいくらいの設定なのに、本当に勿体ないです。


気楽に読めるので、原作を知らない方はこの作品をきっかけに、ぜひ曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』も読んでみてもいいのでは。
映画版と小説版を比べるのもまた楽しそうです(何やら設定が違うようですし)。
★不道徳教育講座 (三島由紀夫)
JUGEMテーマ:読書
 三島由紀夫というと何をイメージするだろう?
私は生前の彼を知らないので、硬くて繊細な日本文学者というイメージと、壮絶な最期を遂げたらしいということしか思いつかないのですが、
この本の中には私の知らない三島由紀夫が居ました。

本書は一見、とてもとても不道徳です。
だいたい題名からして「不道徳」だし、ちょっと目次から章題を引用すると
「童貞は一刻も早く捨てよ」
「罪は人になすりつけるべし」
「先生を教室でユスるべし」
「恋人を交換すべし」
…どれもこれもOh! と叫んで頭を抱えたくなる章題です。
だからこそ、あの三島が? と衝動買いして楽しく読んだのですが、本文もなかなか刺激的で、満員電車の中でうっかり後ろから覗き見でもされようものなら、桃色で刺激的な単語の羅列に、勝手に変な誤解をされかねません。

でも、それはあくまで誤解なのです。
章題はとても刺激的でも、そこには氏ならではの逆説的道徳が込められており、結論だけ見ればどれも至極真っ当です。
たとえば、
「童貞は一刻も早く捨てよ」の章では曰く、童貞を捨てるということは「男にとってはこれが人生観の確立の第一歩」(p.43)と。
また
「恋人を交換すべし」の章では、日本の伝統的な浮気の概念を定義しつつ、「純粋なエロティシズムの本質は、孤独を前提にするもの」(p.330)で、「その過渡的な形が、恋人交換」(p.330)であると考察し、終いには「考えてみれば恋愛にはトランプ遊び以上の値打はない」(p.332)とばっさり言い捨てます。トランプ遊びならば大いに交換すべしというわけです(半ば逆説的に)。

以上はちょっと刺激に満ちた例ですが、他にもたとえば「何かにつけてゴテるべし」の章で、
「日本も三等国か四等国か知らないが、そんなに、「どうせ私なんぞ」式外交ばかりやらないで、たまにはゴテてみたらどうだろう」(p.297)
などとあるのを読むと、つい最近書かれた文章ではないかと錯覚してしまいます。


各章は概ね五ページ前後できちんとまとめられています。
刺激と逆説的道徳とそれを裏付ける知識とを、ほんの五ページに詰めこんでしまって、おまけに難しくない。
軽いようで軽くない、読み応えのある内容です。

解説によれば、本書は「週刊明星」という女性向き大衆週刊誌に連載された内容が元になっており、だからこそいつもの文学の中で見せる硬派な文章ではないそうです。
私にはどうにも、居酒屋で親戚のお兄さんが酔っ払いながら道徳論や人生論を語っているような、
そんな気さくで親しみやすい印象を受けました。

昭和四十二年初版発行とはとても思えない、全く色あせないエッセイ集です。
人生に疲れたときにふらっと読み返したくなる一冊です。

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